企業サイトを作るとき、WordPressやCMSは基本的に勧めていない。
管理画面があれば自分たちで更新できるように見えるが、実際には更新作業が面倒で続かなくなることが多い。使われなくなった管理画面だけが残り、プラグイン、本体、テーマのバージョンを管理し続けることになる。更新できる仕組みを入れた結果、サイトそのものとは別の保守作業が増えてしまう。
現在は、まずサイト全体を静的に作ることを標準として提案している。
CMSの代わりに、更新方法を設計する
静的サイトにすることと、クライアントが更新できないことは同じではない。
記事や事例を自分で追加したい場合は、コンテンツ用のリポジトリをクライアントと共有する。記事はMarkdownで管理し、リポジトリには AGENTS.md を一本置く。
AGENTS.md には、更新時に守る形式、触ってよいファイル、確認すべき項目、削除や上書きのような破壊的操作を避けるためのルールを書く。クライアントはChatGPT WorkやCoworkから「この記事を追加したい」「この文章を直したい」と依頼すれば、AIがルールに沿ってMarkdownを更新できる。
CMSの入力欄を一つずつ作る代わりに、AIが既存の構造を読んで更新できる環境を渡す。人は管理画面の操作方法ではなく、変更したい内容を伝えればよい。
更新を任せてもらう選択肢も残す
すべてのクライアントが自分で更新したいわけではない。更新作業自体を持ちたくない場合は、文章や画像をLINEなどで送ってもらい、こちらで反映する運用にしている。
この場合は、更新できるCMSを納品して終わりにするより、更新対応を含む契約にしておくほうが分かりやすい。クライアントは管理画面やGitを覚えずに済み、こちらはサイトの構造を壊さずに更新できる。
更新方法は次の二つから選べる。
- コンテンツ用リポジトリとAIを使い、クライアントが更新する
- 素材だけ送ってもらい、こちらが更新する
どちらを選んでも、公開するサイト本体は静的なまま保てる。
技術スタックは請求まで含めて選ぶ
構成は案件ごとに変えるが、現在はVercelを配信基盤にして、問い合わせがあればResend、データ保存が必要ならNeon、ログインが必要ならBetter Authを組み合わせることが多い。
この組み合わせ自体に強いこだわりがあるわけではない。必要な機能だけを追加でき、サービスごとの役割と費用を説明しやすい。初期制作費、維持費、追加機能の費用を分けられるため、見積もりと請求もシンプルになる。
最初からデータベースや認証を入れるわけではない。企業情報と記事を公開するだけなら静的サイトで完結させ、問い合わせ、保存、ログインといった要件が生まれたところにだけサービスを足す。
自分で作りたいなら、ChatGPT Sitesもある
サイト制作そのものに少し意欲があるクライアントなら、ChatGPT Sitesで完結させる選択肢もある。Cloudflare系の構成がまとまっていて、ひとつのプロダクトとして扱いやすい。
こちらへ依頼してもらうことだけを正解にはしていない。自分で作れる人は自分で作り、更新だけ任せたい人には更新の経路を用意し、全部任せたい人には運用まで含めて引き受ける。
大切なのはCMSを導入したかどうかではなく、公開後に誰が、どのくらいの負担で更新を続けられるかである。
WordPressから静的サイトへ移行したコーポレートサイトのリニューアルでも、制作だけでなくドメイン移管と公開後の運用まで担当した。サイトの構成と更新方法を分けず、納品後に続く仕事として設計している。